大植英次指揮 ハノーファー北ドイツ放送フィル
「大阪フィルハーモニー交響楽団」の音楽監督である大植英次さんは、現在ドイツの「ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー」の主席指揮者と、スペインの「バルセロナ交響楽団」の音楽監督もつとめている。今日は、大植さんがハノーファー北ドイツ放送フィルを指揮する演奏会がザ・シンフォニーホールであったので聴きに行ってきた。
- マーラー 交響曲第9番
マーラーが完成した最後の交響曲である第9番は、とにかく「死」の影が濃い。そして、その「死」というものを、演奏者がどう捉えているかによって、音楽の表情がまったく変わってしまう不思議な音楽でもある。特に最終楽章では、悩みもがいて倒れ死ぬ場合もあれば、穏やかな魂が静かに天に召されていく場合もある。
大植さんの描く第4楽章は、ひたすら「前向き」だった。3楽章までに描かれる人生のあらゆる経験から得た信念や自信を胸に、前を向いて堂々と迷わず進んでいく。人生の終わりは、英雄譚の完成を意味する、といったところか。そうか、そんなポジティブな捉え方もあるんだ、と少し驚きながら、自分の死生観について改めて考えさせられた。
私は、この曲の終楽章を聴く度に、「自分は人生の最後の最後でどんな言葉を残せるんだろう」と真剣に考えてしまう。「悔いなし」と笑顔で死ぬか? 最後の最後まで、自分以外の誰かの幸せを願うことができるか? 「死」の、その先にあるものを信じ、穏やかな心で目を閉じられるか?
今日の「第9番」は、まさに現世での悔いなき大往生といった雰囲気。常に見通しがよい響きで、精緻な表現を聴かせるオーケストラの能力も相まって、非常に説得力の高い演奏だった。
こういうものに接していくことで、人生観って形作られていくんだろうな。
最後の音がホールの空気に吸い込まれていったあとも、1分近く拍手はおこらず、静寂が会場を支配した。その沈黙も含めて、音楽。
アンコールを一曲もやらなかったのもよかった。この後に、お気楽なアンコール・ピースなんてやられちゃ、台無しだもんね。
大植さん、今度は同じ作曲家の3番あたり、大阪フィルとお願いします!



